2024年1月のニュースを振り返る

個人的に1月に読んだニュース記事から気になったものを3点。
  1. K-POP業界での活躍を目指す外国人向けのビザ、韓国政府が発給へ | Forbes JAPAN(1/10)
  2. さやか星小学校、長野県に2024年4月開校 | ReseEd (1/10)
  3. 中学校で理科の時間に「避妊や中絶」の話 男性教諭を停職処分に  | カンテレ(1/30)


K-POP業界での活躍を目指す外国人向けのビザ、韓国政府が発給へ  

 音楽や映画に代表される「K-POP文化」の世界的なプレゼンスが増している。そこには、国家戦略があることは間違いことで、その一環の動きとして指摘できるのがこの話題。
 報道によれば、2024年から韓国でパフォーミングアーツなどを学ぶことを希望する外国人を対象とする「Kカルチャー研修ビザ」(仮称)の発給を開始するという。
 私が関わっている高等学校教育の世界でも、専門学校の進学先として韓国文化を学ぶという学科が新設されていたりする例もあり、韓国文化を学ぶというキャリア設計は今後注目されるものと思う。

K-POP業界での活躍を目指す外国人向けのビザ、韓国政府が発給へ | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

さやか星小学校、長野県に2024年4月開校

 新しい小学校の開校のニュース。「デジタルテクノロジーと行動分析学をかけあわせたインクルーシブな先進教育を行う」という。デジタルテクノロジーを使って児童一人一人の発達段階や学習進度に合わせて個別のプログラムを提供する。
 「学習のあたりまえ・評価のあたりまえ・子供の対人関係のあたりまえ」にメスを入れて新しい先進教育を行うという触れ込み。個別最適化された学びの最先端と言えそうだが、危うさを感じないではない。とまれ新しく特色ある学校が生まれるのは喜ばしいことである。開校後の続報に期待したい。

さやか星小学校、長野県に2024年4月開校 | 教育業界ニュース「ReseEd(リシード)」

中学校で理科の時間に「避妊や中絶」の話 男性教諭を停職処分に

 1月中ニュースのうち、個人的に心がザワザワしたニュース。大阪府内の市立中学校で、理科の授業中に避妊や中絶に関する話など不適切な授業を行ったとして、31歳の男性教諭が懲戒処分を受けたというニュース。
 報道から伝え聞く限りの授業の情報しかないので、なんとも言えないところも多いのだけれど、こういう対応は、堀川修平『「日本に性教育はなかった」と言う前に:ブームとバッシングのあいだで考える』が取り上げたような「性教育バッシング」の匂いを感じてしまう。
 報道によれば、「去年7月、学校に無断で、担当する理科の授業時間を使い、「ヒトの性にまつわる話」と題する話を複数回にわたって行った」とのことで、「自作のスライドを使い人工妊娠中絶や避妊方法などに関する話をして、生徒に対し性的欲求の有無を問いかけて「望まない妊娠を防ぐにはどうするか」と繰り返し質問し、指名して答えさせたほか、自分の性体験を語るなどしていた」ようである。「授業を受けた生徒が別の教諭に訴えたことから調査を行ったところ、授業を受けた中学3年の生徒175人のうち半数以上が不快感や嫌悪感を訴え」、「大阪府教育委員会は、担当する科目の授業時間を使って不適切な授業を行ったとして、男性教諭を6カ月の停職処分とし」た。
 処分はなぜなのだろうか。「学習指導要領から逸脱している」との文言を用いた報道も一部あったが、学習指導要領は「教えてはならないこと」を規定しているものではない。そのことは、学習指導要領内の「総則」において「学校において特に必要がある場合には、第2章以下に示していない内容を加えて指導することができる。また、第2章以下に示す内容の取扱いのうち内容の範囲や程度等を示す事項は、全ての生徒に対して指導するものとする内容の範囲や程度等を示したものであり、学校において特に必要がある場合には,この事項にかかわらず加えて指導することができる。ただし、これらの場合には、第2章以下に示す各教科、道徳科及び特別活動の目標や内容の趣旨を逸脱したり、生徒の負担過重となったりすることのないようにしなければならない」とある通りである。
 であるならば、問題となりうるのは2点である。第一に、「学校において特に必要がある場合には」との規定の通り、教科指導内における内容編成の学校ガバナンスの問題だ。つまり、授業の取り扱いとして特色あるものを取り上げるならば、独断でやるのではなくて、学校全体で相談して進めるべき、との論点だ。これは一理あることではあり、そして「無断で」という文言を用いた報道が多かったことからも、問題視された理由の一つではあると推測できる。しかし、学習指導要領の内容規定を踏まえて、教師の工夫によって教師自身の問題意識に基づいて話題を選択したり、教材を設定したりすることは、日常的に教師が進めている営みであるわけで、そうした日常業務の「どの点に」「どの程度まで」ガバナンスが徹底されるべきかは議論が必要ではないか。性教育のように、日本においてタブー視され、避けられてきた領域であれば特にそうである。
 第二に、内容の問題である。学習指導要領に示された「目標や内容の趣旨を逸脱したり、生徒の負担過重となったりする」ケースは、教師の工夫としては認められるべきではないだろう。本授業の内容は報道から伝え聞く情報に限られているので、判断を留保すべきだろう。検証が望まれる。

中学校で理科の時間に「避妊や中絶」の話 男性教諭を停職処分に 「配慮が不十分な授業をして申し訳ない」

 なお、第一のガバナンスの点に関連して、産経新聞の報道が「相談されても認められる内容ではなかった」との教育委員会担当者の談話を採用していることが着目される。ここから読み取りうるのは、主要な問題がガバナンスではなく、内容であると位置付けられているのではないか、ということである。その点で、より深められるべき点は、以下の通りになる。つまり、(1)内容に大きな問題があって処分となった事例である、のかあるいは、(2)内容に大きな問題があったと見做されたため処分となった事例である、という場合のいずれであるのかという場合である。
 性教育の実践は、時の政治権力によっても、「問題があると見做されたため」にバッシングされてきた歴史がある。この事例が、その系譜に位置付くものなのではないか、という疑念を私は拭うことができない。また、この報道は、陰に陽に性教育実践者に悪影響を与えうるだろう。無論、この授業が問題なかったはずだ、と言い切ることは情報も不足しており不可能であるものの、意味がある批判・処分であったのだろうか、という疑念を提示しておくことは、重要であると思っている。この点も、検証が望まれる。

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