(寸評)明治図書『教育科学 社会科教育』2022年1月号

 明治図書『教育科学 社会科教育』2022年1月号は、地理教育特集でした。

巻頭提言の井田仁康提言は、地理教育の課題を小中高の連携に位置づけ整理したものです。整理された地理教育の課題は、以下です。

(1)すべての学校種において教科書として用いられる地図帳をより活用し、地理的・地図の技能を身につける必要があること

(2)小中高を貫く課題として、防災を身近なものとして捉える必要があること

(3)特に中高の指導要領において強調された「未来志向の地理」に向けて、まずはその将来像の構築を可能とする知識・技能や見方・考え方が重要であること

なお高校籍の私は、小中高で同じテーマを扱うということで「学習の重複」にならないよう学校種を超えた研修や交流の必要性を指摘した箇所に、膝を打ちました。

また大野新論文「地理総合をはじめるための準備をどう進めるか」は、高校の新しい教科書の構造に従って執筆されており、「地理総合」に向けた構想をつくるヒントとなるもので参考になります。

キーワード解説では「持続可能な社会づくり」「GISの活用」「国際理解・国際協力」「防災教育」の4つについてコンパクトな解説が付され、勉強になります。

実践紹介としては、小学校で3本、中学校で6本、高校で4本の授業モデルが紹介されています。学校種の異なる授業モデルに触れることができるのも、『社会科教育』誌の魅力のひとつです。

なお、大谷誠一論文に「小・中・高の地理学習において、地誌学習は中学校のみの学習内容だ」(18頁)との記述がありますが、現行「地理B」にも、新カリ「地理探究」にも「現代世界の地誌的考察」という学習項目は明確に設定されており、記述に疑問が残ります。「地理総合」においては、GIS、地球的課題、防災といった論点を強調するために地誌学習が軽視されているきらいはあるものの、高校地理は「地理総合」だけではありません。

本特集は、「地理必修化」に焦点化したために高校の「地理探究」がやや閑却されているきらいがある(授業モデルは1本掲載)ものの、現場教師にとって有益な特集となっているものと思います。特に、私を含めて、地理を専門としない教員にとっては重要な羅針盤となる特集と思います。



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